派遣事業更新が不許可となった場合の再申請とリカバリー対応|原因分析と再挑戦の実務ポイント
労働者派遣事業の更新申請は、形式審査と内容審査の両方で厳しく確認されます。
そのため、万全を期しても不許可通知を受けてしまうケースがあります。
不許可になると「もう派遣事業を継続できないのでは?」と不安になりますが、実際には改善と再申請で再挑戦する道が残されています。
ただし、期限と改善内容を正しく押さえなければ、再申請のチャンスすら失う可能性があります。
本記事では、不許可の原因と直後の対応、再申請に向けた改善策、そして再挑戦を成功させるための実務ポイントを整理しました。
不許可となる典型的な原因
資産要件の未達
- 基準資産額2,000万円、現金預金1,500万円を満たしていない
- 決算上はクリアしていても、残高証明の時点で不足と判断されるケース
責任者要件の不備
- 派遣元責任者が退職・不在
- 講習を未受講のまま申請
- 常勤性や権限を裏付ける資料が不足
帳簿・台帳の重大な欠落
- 派遣元管理台帳の未提出や欠落項目
- 契約書・勤怠・賃金台帳が整合していない
- 保存年限を満たさず不備とされる
是正勧告対応の不十分さ
- 改善報告が形式的で「再発防止策」が弱い
- 改善後の実績期間が短く信頼性に欠ける
- 労働局との連携不足
提出書類の整合性欠如
- 決算書と残高証明が一致しない
- 契約内容と台帳・勤怠の数字が矛盾
- 提出控えと労働局保管の内容が異なる
不許可通知を受けた直後の対応ステップ
- 通知文書を精査
どの条項・要件で不許可となったのかを確認する。 - 指摘事項のリスト化
資産要件不足/責任者不備/帳簿不備など、項目ごとに整理。 - 弁明・補正の余地を確認
形式的な不備であれば補正可能か、実質的な要件未達かを見極める。 - 専門家に相談
顧問社労士・会計士など、改善策を検討できる専門家と共有。 - 期限の把握
不許可後の再申請期限を確認し、逆算スケジュールを作成。
再申請に向けた準備と改善策
資産要件不足の場合
- 増資や借入で資産を補強
- 中間決算・残高証明で改善状況を証明
- 必要に応じてAUP報告書で補完
責任者不足の場合
- 代替責任者を選任し、講習を受講
- 就業規則や職務分掌で常勤性・権限を明確化
- 欠員時の体制図を示す
帳簿整備の不備の場合
- 欠落項目を補完して統一フォーマットに
- 契約・勤怠・賃金の一貫性を確保
- サンプル監査を実施し、改善記録を添付
是正勧告対応が不十分な場合
- 改善報告を「事実→原因→是正→再発防止」で再作成
- 教育記録・監査記録を添付
- 再発防止策を文書化して証拠化
再申請のスケジュール管理
- 発生時:不許可通知受領
- 受領から1か月以内:改善策の実施開始、証拠収集
- 受領から2か月以内:改善報告+補強資料を揃える
- 受領から3か月以内:再申請提出(労働局と事前調整を推奨)
リカバリーの実務ポイント
- 改善策の証拠化
規程改訂・教育実施・残高証明など、裏付け資料を必ず添付。 - 再発防止策の明文化
単なる「改善しました」ではなく、仕組みとして再発防止を説明。 - 労働局との事前相談
改善内容を説明し、受理可能性を確認。信頼関係を築くことが再申請成功につながる。
不許可リスクを再度避けるために
- 内部監査を定期化
契約・台帳・勤怠をサンプル監査し、不備を早期発見。 - 書類管理を仕組み化
提出書類をリスト化し、PDF控えを保存。 - 準備を6か月前から開始
直前では改善できない要件が多いため、早期対応が肝要。
まとめ:不許可は改善のチャンス
派遣事業更新で不許可となっても、それが即「終了」ではありません。
原因を正確に把握し、改善策を証拠付きで示せば、再申請で認可を得る道は開けます。
- 通知文書の精査と指摘事項のリスト化
- 資産・責任者・帳簿・是正対応の改善
- 証拠資料と再発防止策の提示
- 労働局との事前相談
不許可を恐れるのではなく、改善と再挑戦の機会として捉えることが重要です。