赤字決算でも派遣事業更新はできる?資産要件との関係と認可を受けるための実務ポイント
派遣事業の更新申請にあたって「直近が赤字決算だったが、更新は可能なのか?」という相談は少なくありません。
結論から言えば、赤字決算=即不許可ではありません。
更新審査で重視されるのは利益の有無ではなく、資産要件を満たしているかどうかです。
この記事では、赤字決算の場合に更新が可能かどうか、資産要件の見方、赤字で問題となる典型パターン、そしてリカバリー策について詳しく解説します。
赤字決算は即不許可ではない
派遣事業の更新において労働局が審査するのは、事業を継続する財務基盤があるかどうかです。
そのため「利益が出ていないから不許可」という単純な判断ではなく、以下の観点でチェックされます。
- 基準資産額:2,000万円以上
- 現金・預金:1,500万円以上
- 債務超過になっていないか
- 短期の支払能力があるか(流動比率など)
つまり、赤字でも資産要件を満たしていれば更新は可能です。
更新審査で重視される財務指標
基準資産額
- 貸借対照表における純資産が2,000万円以上必要です。
- 繰越損失によって純資産が減少すると、基準割れを起こす可能性があります。
現金・預金
- 1,500万円以上が必要です。
- 決算時点ではクリアしていても、残高証明の取得時に不足していれば不許可のリスクがあります。
債務超過の有無
- 資産より負債が多い場合は債務超過となり、原則として更新はできません。
流動性の確認
- 短期債務を支払えるかどうか、流動比率や資金繰りの健全性もチェックされます。
赤字決算で問題となる典型パターン
- 繰越損失による純資産不足
過去の赤字が積み上がり、純資産が2,000万円を割っているケース。 - 親会社への送金で資金不足
黒字でも、グループ会社への送金で現金預金が1,500万円を下回る。 - 資産の評価が不十分
未回収債権や棚卸資産が実質的に回収困難で、実態としては要件不足と判断される。 - 債務超過状態
純資産がマイナスとなり、継続基盤がないとみなされる。
改善・対応策(リカバリーの実務)
増資による資産強化
- 新株発行や資本準備金の振替で純資産を増加させる。
- 更新申請前に登記を完了し、登記事項証明書を提出。
借入による現金確保
- 銀行借入などで現金預金を増加させる。
- 残高証明で基準額を上回ることを示す。
中間決算・残高証明の活用
- 本決算では不足していても、中間決算で改善していれば補完可能。
- 残高証明で最新の資金状況を提示。
AUP報告書の活用
- 会計士による「合意された手続実施結果報告書」で資産要件の裏付けを示す。
再申請・リカバリーの流れ
赤字決算が原因で不許可となった場合でも、改善すれば再申請は可能です。
- 不許可通知を受領
- 不足要件をリスト化
- 増資・借入・残高証明などで改善
- 改善後の証拠資料を準備
- 労働局と事前相談の上で再申請
関連:派遣事業更新が不許可となった場合の再申請とリカバリー対応
不許可リスクを避けるための実務ポイント
- 決算期の数か月前から資産状況を確認する
- 親会社への資金移動は申請時期を考慮して調整する
- 責任者・帳簿など他要件も同時に確認する
- 改善策は必ず「証拠化」して提示する
赤字でも資産要件を満たせば更新可能
派遣事業更新は赤字決算だからといって自動的に不許可となるわけではありません。
重要なのは、基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円を確保できているかどうかです。
赤字で要件を割り込む場合も、増資や借入、中間決算、AUP報告書などの手段で改善・補完できます。
早めに資産状況を把握し、証拠資料を揃えて対応することが、更新成功の鍵です。