派遣事業更新に必要なマージン率公開ガイド|公開方法・記録保存・不許可リスク回避の実務ポイント
派遣事業の更新審査において、資産要件や責任者体制と同じくらい注目されるのが「マージン率の公開状況」です。
マージン率とは、派遣料金から派遣労働者の賃金を差し引いた割合を指し、派遣会社がどの程度の利益を得ているかを示す重要な指標です。
労働者派遣法では、派遣元事業主に対して「マージン率を含む一定の情報公開」を義務付けています。これを怠ると、労働局からの是正勧告や、場合によっては更新不許可につながることもあります。
本記事では、派遣事業更新を確実に突破するために必要なマージン率公開の基本要件と実務ポイント、不許可リスクを避けるための対策を解説します。
マージン率公開が更新審査で重視される理由
派遣労働者は、自分が受け取っている賃金と派遣会社が受け取っている派遣料金との差を知る権利があります。
その透明性を確保するために設けられた制度が「マージン率公開義務」です。
労働局は更新審査で、マージン率が正しく算出・公開されているかを確認します。公開していない、または内容が不正確である場合には「法令遵守意識に欠ける」と判断され、更新不許可のリスクが高まります。
👉 関連:派遣事業更新の不許可事例と回避方法
マージン率公開の法的要件
労働者派遣法第23条により、派遣元は次の情報を公開しなければなりません。
- 派遣料金の平均額
- 派遣労働者の賃金の平均額
- マージン率
- 教育訓練に関する事項
- 福利厚生に関する事項
公開方法としては、自社ホームページでの掲載、または事業所内での掲示が求められます。
この公開義務を怠った場合、派遣事業更新と労働局対応ガイドでも触れたように、是正勧告の対象となります。
マージン率の計算方法
マージン率の算出は次の式で行います。
マージン率 = (派遣料金総額 − 賃金総額) ÷ 派遣料金総額 × 100
ここで注意すべきポイントは以下です。
- 教育訓練費や福利厚生費を含める場合は、算出根拠を明示する
- 端数処理は小数点第1位までが一般的だが、説明責任を果たせる方法を選択
- 計算過程を文書化し、労働局から求められた場合に提示できるようにする
👉 関連:派遣事業更新に必要な教育訓練体制ガイド
公開方法と実務対応
マージン率は以下の方法で公開する必要があります。
- 自社ホームページへの掲載
専用ページを設け、わかりやすく記載する。 - 事業所内での掲示
派遣労働者が閲覧できる場所に掲示。 - 更新審査における提示
労働局から求められた場合、すぐに提示できる体制を整備する。
公開内容は単なる数字だけでなく、教育訓練や福利厚生の概要も含める必要があります。
👉 関連:派遣事業更新の実務フロー完全ガイド
記録保存のポイント
マージン率公開の信頼性を担保するためには、算出根拠の記録保存が不可欠です。
- 派遣料金・賃金の集計表
- 教育訓練費・福利厚生費の内訳資料
- 公開した内容と一致する証拠資料
これらを3年間以上保存することが望ましく、電子保存を行う場合は改ざん防止措置を講じる必要があります。
不許可リスク事例と回避策
マージン率公開に関する不許可リスクの典型例は以下です。
- 公開を怠った:ホームページや掲示をしていない
- 公開内容が不正確:算出方法に誤りがある
- 根拠資料が保存されていない:提示を求められても対応できない
これらを回避するためには、定期的に算出方法を見直し、責任者が公開状況を確認することが重要です。
👉 関連:派遣事業更新チェックリスト総まとめ
マージン率公開を徹底して更新審査を突破
マージン率公開は、派遣労働者の処遇の透明性を確保するために不可欠であり、派遣事業更新の合否を左右する要素でもあります。
- 公開義務を正しく理解し、確実に実施する
- 計算方法と根拠を明確に残す
- ホームページや事業所でわかりやすく掲示する
- 責任者が定期的にチェックし、労働局対応に備える
これらを徹底することで、安心して派遣事業更新に臨むことができます。