派遣事業更新の不許可事例と回避方法|資産要件・帳簿不備・責任者不在への対応策
労働者派遣事業を継続するには、5年ごとの更新手続きが欠かせません。更新申請は形式的な延長ではなく、新規許可と同じ水準で審査されます。そのため、基準を満たさなければ「不許可」となるケースも存在します。
実際に、資産要件不足や帳簿不備、責任者の要件未達、法令違反などを理由に更新が認められなかった事例が見られます。本記事では、不許可になりやすい典型事例とその回避方法を整理し、安心して更新に臨むためのポイントを解説します。
派遣事業更新で不許可となる主な事例
1. 資産要件を満たさない
- 基準資産額2,000万円以上
- 現金・預金1,500万円以上
- 債務超過でないこと
これらの要件が不足すると、更新は認められません。
特に「期末だけ現預金が不足」するケースが多く、資金繰りやグループ会社との資金移動によって形式的に要件を欠く事例が典型です。
関連:詳しくは 派遣事業更新に必要な資産要件 をご覧ください。
2. 帳簿や書類の不備
派遣元管理台帳や雇用契約書、就業条件明示書など、法律で義務づけられている帳簿や書類が整備されていない場合、不許可の大きな要因となります。
帳簿は単に保存しているだけではなく、実際の運用が適正に行われているかも確認されます。
関連:更新に必要な帳簿については 派遣事業更新で必要な帳簿まとめ を参考にしてください。
3. 責任者要件を満たさない
派遣元責任者の配置は必須要件です。以下の場合は不許可となる可能性があります。
- 派遣元責任者が不在
- 講習未受講で更新時点で要件未達
- 常勤ではない責任者を形式的に配置している
更新審査では「実質的に責任者が機能しているか」が問われます。
4. 法令違反や是正命令の未対応
労働基準法や派遣法の違反歴があり、是正勧告や指導に対応していない場合も不許可リスクが高まります。
特に「二重派遣」「労働条件明示違反」「社会保険未加入」などの違反は重視されます。
審査でチェックされるポイント
更新申請で労働局が確認するのは次の点です。
- 決算書の数値と資産要件の適合性
- 銀行残高証明などの裏付け資料
- 責任者の講習受講状況・常勤性
- 派遣元管理台帳・契約書類の整備状況
- 法令違反歴の有無と改善状況
不許可事例ごとの回避方法
資産要件不足の回避策
- 増資による純資産の改善
- 金融機関からの借入で現預金を確保
- 中間決算や残高証明を用いて補足
- AUP(合意された手続実施結果報告書)で実質的な資金状況を説明
詳しくは 派遣事業更新で資産要件不足のときの対応 を参照してください。
帳簿不備の回避策
- 派遣元管理台帳、雇用契約書、就業条件明示書を整備
- 労働者名簿や賃金台帳を定期的に点検
- 電子管理の場合はバックアップや出力体制を確立
責任者要件の回避策
- 派遣元責任者講習を早めに受講
- 常勤で勤務する人物を正式に配置
- 責任者不在の場合は代替責任者を事前に選任
法令違反リスクの回避策
- 是正勧告への対応を記録・証憑化
- 社会保険加入や労働条件通知の徹底
- コンプライアンス研修や内部監査の実施
差し戻しから再申請までの流れ
- 更新申請を提出
- 労働局から差し戻し・補正依頼
- 資料追加・改善対応
- 再申請または補正対応で認可
差し戻しは不許可ではありませんが、期限切れまでに対応できなければ不許可同然です。
必ず6か月前から余裕を持った準備が必要です。
まとめ:不許可事例を知り、早めの対応でリスク回避を
派遣事業更新では、資産要件不足、帳簿不備、責任者不在、法令違反といった不許可事例が見られます。
しかし、早期に対応すれば回避可能です。
- 資産要件は増資・借入・中間決算・AUPで対応
- 帳簿は法定様式を漏れなく整備
- 責任者は講習受講と常勤配置を徹底
- 法令違反は改善と再発防止体制を提示
不許可事例を把握し、期限の6か月前から逆算して準備すれば、更新成功の可能性は十分に高まります。