派遣事業更新に必要な安全衛生管理体制ガイド|産業医・衛生委員会・健康診断と更新審査対応の実務ポイント
派遣事業の更新審査では、資産要件や責任者体制、帳簿整備だけでなく、安全衛生管理体制 も重要な確認項目です。
派遣労働者は多様な派遣先で働くため、健康リスクや労災リスクが高まりやすく、派遣元としての管理体制が不十分だと「労働者保護を欠いている」と判断され、不許可につながる可能性があります。
この記事では、派遣事業更新において求められる安全衛生管理体制の基本要件、健康診断や衛生委員会の運用、不許可リスク事例と回避策、審査に備えた実務ポイントを詳しく解説します。
安全衛生管理体制が更新で問われる理由
派遣労働者は、派遣元の雇用主と派遣先の指揮命令系統の間に立ち、通常の労働者より安全衛生リスクが複雑化しています。
- 派遣元には 雇用主としての安全衛生義務 がある
- 派遣先には 労務提供場所としての安全配慮義務 がある
- 両者の連携が不足すると、事故・健康被害時に対応が遅れる
そのため労働局は更新審査で「派遣元の安全衛生管理体制が機能しているか」を重視します。
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安全衛生管理体制の基本要件
産業医の選任
- 常時50人以上の労働者を雇用する事業場では産業医の選任が義務付けられています。
- 選任状況や契約書を保存し、審査時に提示できるようにしましょう。
衛生管理者の選任
- 常時50人以上の労働者がいる場合、衛生管理者を選任する必要があります。
- 衛生委員会の構成員としても重要な役割を担います。
衛生委員会の設置
- 常時50人以上の労働者を雇用する場合は設置義務があります。
- 毎月1回以上の開催、議事録作成・保存が必須。
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健康診断の実施と記録管理
派遣元事業主は、雇用するすべての労働者に対し健康診断を実施する義務があります。
定期健康診断
- 年1回以上の実施が必要
- 結果は本人へ通知し、記録を5年間保存
特殊健康診断
- 有害業務(化学物質、騒音など)に従事する労働者が対象
- 派遣先での就業内容に応じて必要となる場合がある
記録の整備
- 健康診断結果一覧表を作成し、審査で提示できるようにする
- 受診勧奨を行った記録も残すことが望ましい
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派遣先との連携ポイント
派遣元と派遣先が安全衛生の責任を分担し、適切に連携することが不可欠です。
- 安全衛生教育の分担
派遣元は一般的教育、派遣先は現場固有の教育を実施。 - 労災発生時の対応
派遣元は労災保険の適用手続きを行い、派遣先は現場対応を行う。 - 情報共有の仕組み
定期的な連絡会議や報告フローを整備し、事故やヒヤリハット事例を共有。
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不許可リスク事例と回避策
安全衛生管理体制の不備によるリスク事例は以下の通りです。
- 産業医を未選任のまま放置
- 衛生委員会を形だけ設置し議事録がない
- 健康診断の未実施または記録が不十分
- 労災発生時の対応が遅れ、是正勧告を受ける
これらは労働局に「体制が整っていない」と判断され、不許可要因になります。
予防的対応 と 記録保存 を徹底することが最重要です。
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体制強化の実務チェックリスト
- 産業医・衛生管理者の選任文書を整備しているか
- 衛生委員会を毎月開催し、議事録を保存しているか
- 健康診断を年1回確実に実施しているか
- 労災発生時の報告・対応フローを整備しているか
- 派遣先との安全衛生協定を締結しているか
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安全衛生管理体制を整えて安心の更新へ
派遣事業更新では、単に産業医や衛生委員会を形式的に設置するだけでは不十分です。
- 実効性ある体制運用
- 記録の保存と提示体制
- 派遣先との協調による安全衛生教育
これらを徹底することで、不許可リスクを避け、労働者の安全と健康を守りながら安心して更新審査に臨むことができます。