【完全ガイド】派遣事業許可の要件と申請プロセスの全て
労働者派遣事業を始めるには許可が必要
労働者派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要です。
2015年の法改正により、一部の「特定労働者派遣事業」は廃止され、現在はすべて許可制となっています。
つまり「小規模だから届出でよい」という仕組みはなく、法人・個人事業主を問わず、派遣業を始めるには必ず許可を取る必要があります。
派遣事業の許可要件とは?
派遣事業の許可を取得するには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 資産要件: 財務状況に関する基準を満たしているか
- 事務所要件: 独立した区画、プライバシー確保のあるオフィスか
- 体制要件: 派遣元責任者を選任し、講習を修了しているか
- 法令遵守要件: 過去に重大な違反がなく、コンプライアンス体制が整っているか
これらのいずれかが欠けると、許可は下りません。
資産要件の詳細
派遣事業の許可取得で最も厳しいのが資産要件です。
- 基準資産額:2,000万円以上
- 現金・預金額:1,500万円以上
- 負債超過でないこと
資産要件を満たしていない場合、増資や借入で改善する必要があります。
詳しくは資産要件未達時の対応をご覧ください。
事務所要件
事務所も派遣事業の許可において重要です。
- 独立区画で、壁や仕切りがあり他企業と区別されていること
- 最低限の面積があり、派遣労働者との面談スペースを確保できること
- 虚偽の所在地でないこと(バーチャルオフィス不可)
「机だけを借りているシェアオフィス」などは許可対象外です。
実態あるオフィスを確保する必要があります。
体制要件(派遣元責任者)
派遣事業を行うには、必ず派遣元責任者を選任しなければなりません。
- 派遣元責任者講習(6時間程度)を修了していること
- 常勤であること
- 実務経験や法令知識があることが望ましい
責任者の修了証は、許可申請時に提出が求められます。
法令遵守体制
過去に労働基準法や職業安定法に違反している場合は許可が下りないことがあります。
また、申請時には帳簿管理や個人情報保護の体制が整っているかどうかもチェックされます。
許可取得後も定期的な監査や報告義務があるため、法令遵守体制を維持することが重要です。
許可取得までの流れ
許可申請から取得までの流れは以下の通りです。
- 資産・事務所・体制を整備
- 派遣元責任者講習を受講
- 必要書類を準備(定款、登記事項証明書、決算書など)
- 労働局で事前相談
- 申請書の提出
- 審査(1〜2か月程度)
- 許可証の交付
窓口は管轄労働局です。
必要書類の例
申請時に必要な代表的書類は以下です。
- 派遣事業許可申請書
- 登記事項証明書・定款
- 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 残高証明書
- 事務所の図面・賃貸借契約書
- 派遣元責任者講習修了証
- 役員の履歴書・誓約書
不備があると受理されません。
許可にかかる費用
派遣事業の許可取得に必要な最低限の費用は以下の通りです。
- 登録免許税:12万円
- 派遣元責任者講習:約1万円
加えて、事務所整備費や増資・借入費用、専門家依頼費用(行政書士・社労士など)もかかる場合があります。
更新について
派遣事業の許可は5年ごとに更新が必要です。
更新時にも資産要件や帳簿整備状況がチェックされます。
更新手続きの詳細は派遣事業の更新手続きをご覧ください。
よくある不備
派遣事業の申請で多い不備は以下の通りです。
- 資産要件を満たしていない
- 責任者講習修了証の未提出
- 事務所の独立性不足
- 決算書と申請書の整合性が取れていない
こうした不備があると不許可になるため、十分な準備が必要です。
まとめ:派遣業を始めるには厳格な要件を満たす必要がある
派遣事業を始めるには、資産・事務所・体制の3要件を満たし、必要書類を整えて申請しなければなりません。
特に資産要件はハードルが高く、早めの準備が不可欠です。
要件を理解し、計画的に進めることで、スムーズに派遣業をスタートできるでしょう。