合意された手続と監査、どこが違う?【専門家が徹底比較】

AUPとは?

AUP(Agreed Upon Procedures:合意された手続)とは、依頼者と公認会計士が事前に合意した特定の手続だけを実施し、その結果を報告する業務です。監査のように「財務諸表全体の適正性」を保証するものではなく、依頼者のニーズに合わせた限定的な確認にとどまる点が特徴です。

例えば「売上の一部が正しく計上されているかを確認したい」「在庫数量に誤りがないかを検証したい」といった依頼があれば、その部分だけを調査します。その結果を事実ベースで報告しますが、監査のように意見表明をすることはありません。

AUPの利点は、範囲が明確であるためコストと時間を抑えやすいことです。監査のように網羅的な検証を行わないため、短期間で効率よく調査結果を得ることが可能です。

AUPが利用される場面

AUPは「すべてを調べる必要はないが、特定の部分はしっかり確認したい」というニーズに応えるものです。よく利用される場面としては、以下のようなケースがあります。

  • M&Aのデューデリジェンス:買収対象企業の売上や在庫など、一部のデータを重点的に確認する場合。
  • 金融機関への説明:融資を受ける際、担保資産や特定の取引について事実確認を求められる場合。
  • 子会社や特定部門のチェック:親会社が特定の勘定科目だけを確認したい場合。
  • 補助金・助成金の申請:交付要件を満たしているか一部の取引について確認が必要な場合。

このようにAUPは「限定的で柔軟な調査」として、企業の意思決定や資金調達をサポートする役割を果たしています。

監査とは?

監査とは、企業の財務諸表が会計基準に従って適正に作成されているかを独立した監査人が検証し、その結果を保証する業務です。監査報告書には「適正意見」や「不適正意見」などが示され、財務諸表の信頼性を高めるために用いられます。

監査は上場企業や大規模法人に義務付けられており、資金調達・投資家への説明責任・取引先への信用維持といった目的のために欠かせません。調査範囲は財務諸表全体であり、売上・費用・資産・負債など広範囲にわたります。

そのため監査には時間とコストがかかりますが、その分「外部に強い信頼性を示せる」という大きなメリットがあります。

AUPと監査の違い

AUPと監査には明確な違いがあります。

比較項目 AUP 監査
目的 依頼者の特定ニーズに沿った事実確認 財務諸表全体の信頼性を保証
調査範囲 依頼者が指定した限定的な範囲 財務諸表全体
保証の有無 保証意見を表明しない 適正意見など保証を行う
報告書の利用者 依頼者や一部の関係者 投資家、金融機関、株主など広範囲
コスト・期間 比較的少なく、短期間で実施可能 高額かつ長期間が必要

この表からもわかるように、AUPは依頼者内部での意思決定や限定的な検証に適し、監査は外部の利害関係者に広く信頼を示すために必要となります。

AUPのメリットとデメリット

メリット:
・調査範囲が限定されるため、短期間で結果が得られる。
・コストを抑えることができる。
・依頼者が本当に知りたいポイントに絞れるため、効率的。

デメリット:
・保証意見を表明しないため、対外的な信頼性は限定的。
・依頼範囲を誤ると、必要な情報が得られない可能性がある。
・監査に比べると利用できる場面が限られる。

このようにAUPは便利な手法ですが、万能ではありません。目的を見極めて活用することが大切です。

監査のメリットとデメリット

メリット:
・財務諸表全体について保証意見が得られるため、信頼性が高い。
・投資家や金融機関など外部に対して強い安心材料となる。
・企業ガバナンスや内部統制の改善につながる。

デメリット:
・調査範囲が広いため、時間とコストが大きい。
・必ずしも企業が期待する結果になるとは限らない。
・中小企業や非上場企業にとっては負担が大きい。

監査は「広く社会に信頼を示す」ために必要ですが、その分負担も大きい点を理解しておく必要があります。

どちらを選ぶべきか?

AUPと監査は「どちらが優れているか」ではなく、「目的に応じて使い分ける」ことが重要です。

  • 限定的な確認をしたい場合:AUPが最適。M&A、補助金申請、特定部門の調査など。
  • 財務諸表全体の信頼性を社外に示す必要がある場合:監査が必須。上場企業、資金調達時、株主や金融機関への説明など。

企業の状況や目的によって選択肢は変わります。社内利用であればAUP、外部への説明責任が伴う場合は監査、と整理すると判断しやすいでしょう。

まとめ:AUPと監査を正しく理解して選択しよう

AUPは「必要な範囲だけを確認できる効率的な手法」、監査は「企業全体の信頼性を保証する強力な制度」です。どちらが適しているかは、依頼者の目的・関係者への説明責任・コストや期間の制約によって決まります。

「柔軟に限定的な検証をしたいならAUP」「広く信頼を示したいなら監査」と理解しておけば、状況に応じて正しい選択ができるでしょう。

当サイトでは、有料職業紹介事業に関するAUPの活用についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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