派遣会社設立前に知るべき、免許申請の全手順と必要条件
派遣事業ライセンスとは?
労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。
一般的には「派遣事業ライセンス」と呼ばれるこの許可は、単に届出をするだけでなく、厳格な要件を満たし、正式に審査を受けなければ取得できません。
許可を受けずに事業を行うと無許可営業となり、罰則や業務停止命令を受けるリスクがあります。
派遣事業を始めたい方にとって、ライセンスの理解は最初の一歩です。
派遣事業ライセンスが必要な理由
派遣事業は労働者と企業の双方に大きな影響を与える事業です。
- 派遣労働者が安心して働けるようにするため
- 派遣先企業が適切に労働力を利用できるようにするため
- 法令遵守を徹底し、不正やトラブルを防ぐため
このような目的から、厚生労働省は一定の基準を満たした事業者にのみ許可を与えています。
派遣事業ライセンス取得の流れ
ライセンス取得の手続きは以下のステップで進みます。
- 資産要件や事務所要件の確認
- 派遣元責任者の選任と講習受講
- 必要書類の準備(決算書、登記事項証明書など)
- 労働局での事前相談
- 労働局窓口への申請
- 審査(約1〜2か月)
- 許可証交付
この流れは新規許可も更新も大きくは変わりませんが、更新の場合は既存の帳簿や教育訓練記録の提出も求められます。
ライセンス取得に必要な要件
派遣事業ライセンスを取得するには、次の要件を満たさなければなりません。
- 資産要件:基準資産額2,000万円以上、自己資本マイナス不可 → 詳細は標準資産額の計算
- 事務所要件:独立区画、20㎡以上、面談室確保 → 許可要件参照
- 体制要件:派遣元責任者の専任配置、講習修了
- 法令遵守要件:過去の法令違反や行政処分歴がないこと
これらが一つでも欠けると申請は認められません。
ライセンス取得にかかる費用
派遣事業ライセンス取得には、必ず登録免許税がかかります。
- 新規許可:15万円
- 更新:9万円
加えて以下の費用も必要になる場合があります。
- 資産要件を満たすための増資や借入費用
- 事務所改装や賃貸費用
- 派遣元責任者講習の受講費用
- 会計士や行政書士への依頼費用
詳しくは派遣事業ライセンス取得コストを参考にしてください。
ライセンス更新のポイント
派遣事業ライセンスは5年ごとに更新が必要です。
更新時も新規と同じ要件が求められるため、日々の体制整備や帳簿管理を怠らないことが重要です。
更新に必要な準備や費用は派遣事業ライセンス更新のページで詳しく解説しています。
帳簿管理と更新審査
派遣事業の更新時に最も多く指摘されるのが帳簿の不備です。
- 派遣元管理台帳・派遣先管理台帳
- 労働者名簿・賃金台帳
- 教育訓練記録
- 派遣契約書・労働条件通知書
不備があると更新不許可のリスクもあります。
更新時に必要な帳簿のページで詳細を確認しておきましょう。
ライセンス申請時のよくある不備
労働局でよく指摘される不備は以下の通りです。
- 決算書の数字と申請書の不一致
- 資産要件を満たしていない
- 事務所面積の不足や区画不十分
- 派遣元責任者講習修了証の欠如
- 帳簿や契約書の未整備
改善策として、AUP(合意された手続)を活用して第三者確認を受ける方法もあります。
派遣事業ライセンスを取得するメリット
派遣事業ライセンスを取得することで、次のようなメリットがあります。
- 法的に安心して派遣事業を行える
- 取引先や派遣スタッフからの信頼性が高まる
- 求人広告や会社案内に「厚生労働大臣許可番号」を記載できる
- 行政や自治体の支援制度を利用しやすくなる
単なる義務にとどまらず、事業運営上の大きな強みになります。
よくある質問(FAQ)
- Q. ライセンス取得にはどれくらいの期間がかかりますか?
- A. 申請から許可まで通常1~2か月程度ですが、不備があると延びることがあります。
- Q. 赤字決算でもライセンスは取れますか?
- A. 自己資本が基準を満たしていれば可能です。基準を下回る場合は増資や借入で改善が必要です。
- Q. 更新を忘れるとどうなりますか?
- A. 有効期限切れ後は派遣事業を継続できず、無許可営業となるため重大な処分を受ける可能性があります。
関連ページ
派遣事業ライセンスを理解するには以下のページも参考になります。
まとめ:派遣事業ライセンスは事業の土台
派遣事業ライセンスは、派遣事業を行うために必須の許可であり、取得と更新を通じて法令遵守と事業の信頼性を確保する仕組みです。
資産・事務所・体制要件を整え、余裕をもって申請を行えば、スムーズにライセンスを取得できます。
ライセンスは義務であると同時に、派遣事業を成功させるための大きな強みとなります。