資産要件ギリギリでも派遣事業更新はできる?審査の実態と安全ラインを確保するための対策
派遣事業の更新を控えた事業者からよく聞かれるのが、
「資産要件は満たしているが、数値がギリギリ。これで大丈夫なのか?」
という不安の声です。
資産要件を形式的にクリアしていれば理論上は更新可能です。
しかし、実際の審査では「ギリギリ」の状態はリスクを伴い、不許可や追加確認を受ける可能性もあります。
この記事では、資産要件がギリギリの場合に審査でどのように見られるのか、リスクを避けるために何をすべきかを詳しく解説します。
派遣事業更新における資産要件の基本
更新申請において、労働局が確認する財務的要件は以下の通りです。
- 基準資産額:2,000万円以上
- 現金・預金:1,500万円以上
- 債務超過になっていないこと
これらは直近決算書と銀行残高証明によってチェックされます。
形式的に要件を満たしていても、実務上は「ギリギリ」の状態では以下のリスクが生じます。
「ギリギリ」で問題になる典型的ケース
残高証明の時点で不足
決算では基準を満たしていても、残高証明を取得した時点で基準を下回ると、不許可となる可能性があります。
繰越損失で純資産が減少
過去の赤字が積み上がっており、資産が目減りしている状況では、形式的に基準をクリアしていても審査で厳しく見られます。
一時的な借入で基準をクリア
短期借入で一時的に資産要件を満たした場合、審査で「安定性がない」と判断されるリスクがあります。
実態との乖離
帳簿上は要件をクリアしていても、回収困難な債権や在庫などが含まれていると、実質的に不十分と判断されることがあります。
審査で重視される「安全ライン」
労働局は数値の形式的充足だけでなく、安定的に基準を満たしているかを見ています。
実務上は、
- 基準資産額:2,500万円程度
- 現金・預金:2,000万円程度
を確保していると「安心して認可できる状態」と見られやすいです。
さらに、流動比率や債務超過リスクがないかも確認されるため、ギリギリの状態は不安定とみなされやすいのです。
資産要件ギリギリのときにできる対策
増資で純資産を補強
株主からの増資によって純資産を底上げします。
登記事項証明書を提出することで、改善を客観的に示せます。
借入による現金確保
銀行からの借入で現金預金を確保するのも有効です。
ただし短期借入ではなく、長期借入や安定的な資金調達であることを示す必要があります。
中間決算・残高証明の活用
決算では不足していても、中間決算や残高証明で改善状況を示すことで更新が認められるケースがあります。
親会社との資金移動を調整
グループ会社に定期的に送金している場合、更新時期だけでも資金を留保する工夫が必要です。
証拠化の重要性
資産要件を満たしていることを示すためには、以下の資料を準備することが有効です。
- 増資登記簿謄本
- 銀行残高証明
- 中間決算書類
- AUP報告書
これらを添付することで、審査官に「安定して基準をクリアしている」と伝えることができます。
不許可リスクを下げるスケジュール管理
資産要件がギリギリの場合は、更新半年前から準備を始めることが重要です。
- 6か月前:資産状況を確認、資金計画を立案
- 3か月前:増資や借入など改善策を実行
- 直前:残高証明を取得し、確実に基準を満たしていることを証明
資産要件は余裕を持って確保が最善策
派遣事業更新は、資産要件をギリギリで満たしていても更新できる場合があります。
しかし、実務上は「余裕を持った確保」が不許可リスクを減らす確実な方法です。
- 基準資産額は2,500万円程度
- 現金・預金は2,000万円程度
を目安に備えることで、安心して審査を通過できます。
資産要件がギリギリで不安な場合は、増資・借入・中間決算・AUP報告書を活用し、必ず証拠資料を揃えて対応することが大切です。