完全版】派遣業許可更新の手続き・必要書類・資産要件|公認会計士が解説のアイキャッチ画像。公認会計士が資産要件の計算、必要書類のチェック、社内体制の整備ポイントを体系的に案内するイラスト

労働者派遣事業の許可更新は、有効期限の3ヶ月前までに申請しなければなりません。必要書類の準備・資産要件の確認・社内体制の整備と、やるべきことが多く、初めて更新を迎える担当者にとっては特に負担が大きいものです。

この記事では、派遣業許可更新に必要なすべての手続きを公認会計士が体系的に解説します。資産要件の計算方法から必要書類チェックリスト、社内体制の整備ポイントまで、申請書類の提出に向けて一つずつ確認していきましょう。


派遣業許可更新の基本(更新時期・有効期間・申請タイミング)

「いつ、何をすればいいのか」がわかれば、焦らず準備できます。

初回は3年・2回目以降は5年

労働者派遣事業の許可有効期間は、取得のタイミングによって異なります。

更新回数有効期間
初回取得3年
2回目以降の更新5年

初回に3年という短い期間が設けられているのは、新規参入事業者の運営実態を一定期間で確認するためです。2回目以降の更新で問題がなければ、以後は5年ごとの更新となります。

申請は有効期限の3ヶ月前までに

許可の更新申請は、有効期限の3ヶ月前から受け付けが始まります。申請が遅れて有効期限を過ぎてしまうと、許可が失効し派遣業を継続できなくなります。

申請から許可証交付までおおよそ1〜2ヶ月かかるため、実務上は有効期限の4〜5ヶ月前から準備を開始するのが安全です。

更新準備の目安スケジュール

有効期限までの期間やること
5〜6ヶ月前資産要件の確認・決算書の準備
4〜5ヶ月前必要書類の収集・社内体制の確認
3ヶ月前申請書類を労働局に提出
1〜2ヶ月後新許可証の交付

資産要件の確認方法(更新できるかどうかの最重要チェック)

資産要件を満たしていない場合、申請しても更新が認められません。最優先で確認してください。

3つの資産要件

労働者派遣事業の許可(更新含む)には、以下3つの財務要件をすべて満たす必要があります。

要件基準
① 基準資産額2,000万円以上(事業所が複数ある場合は、2事業所目から+500万円/所)
② 基準資産額が負債総額の一定割合以上負債の1/7以上
③ 現金・預金額1,500万円以上(事業所が複数ある場合は、2事業所目から+150万円/所)

基準資産額とは、貸借対照表上の資産総額から負債総額と繰延資産を差し引いた額です。税理士や会計士が作成した直近の決算書(貸借対照表)をもとに確認します。

基準資産額2,000万円以上とは

計算式は以下の通りです。

基準資産額 = 資産総額 − 負債総額 − 繰延資産

例)
- 資産総額:5,000万円
- 負債総額:2,800万円
- 繰延資産:0円
- 基準資産額:5,000万円 − 2,800万円 = 2,200万円 → 要件クリア

なお、資産総額には役員や社員への貸付金・立替金も含まれますが、実質的に回収不能なものは控除される場合があります。

赤字でも更新できるケース・できないケース

単年度赤字であっても、上記の基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円を満たしていれば更新は可能です。

ただし、赤字が続いて純資産が毀損し、基準資産額が2,000万円を下回った場合は要件を満たさないため、許可の更新ができなくなります。

赤字が続く場合の対応策:

  • 役員借入金や増資により自己資本を補強する
  • 固定資産の売却で現金・預金を確保する
  • 決算期を変更して黒字期の財務数値で申請する

資産要件の充足に不安がある場合は、申請期限の半年前には公認会計士や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

無料相談の窓口

当事務所では、資産要件の充足確認および決算書の証明(合意された手続・AUP)に対応しています。お気軽にご相談ください。→ 無料相談はこちら

必要書類チェックリスト

書類の不備が最も多いのがこのステップです。提出前に必ず全件確認してください。

全事業者共通の書類

No. 書類名 備考
1 労働者派遣事業許可有効期間更新申請書(様式第1号) 労働局窓口またはハローワークで入手
2 貸借対照表・損益計算書(直近の事業年度分) 税理士署名・捺印のあるもの
3 法人税の納税証明書(その1・その2) 税務署で取得
4 登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 申請日から3ヶ月以内のもの
5 派遣元責任者の住民票(本籍地記載) 申請日から3ヶ月以内のもの
6 派遣元責任者講習修了証の写し 有効期間内のもの(3年ごとの更新が必要)
7 個人情報適正管理規程 自社規程を添付

状況別の追加書類

外国人役員・代表者がいる場合
- 外国人登録証明書または在留カードの写し

事業所が複数ある場合
- 各事業所の平面図・写真(新規開設の場合)

前回の許可以降に変更があった場合
- 変更内容に応じた変更届出書(氏名・住所・役員変更など)

⚠️ 書類の様式は厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で最新版を確認してください。年度によって変更されることがあります。

更新申請の手続きフロー

申請書類を揃えたら、管轄の労働局(需給調整事業部門)に提出します。

労働局への提出から許可証交付まで

① 書類の準備・作成(有効期限5〜4ヶ月前)
       ↓
② 都道府県労働局に申請書類を提出(有効期限3ヶ月前まで)
       ↓
③ 労働局による書類審査(提出後1〜2ヶ月)
       ↓
④ 不備がある場合、補正の連絡が来る
       ↓
⑤ 許可証の交付・送付(有効期限の前後)

申請窓口は各都道府県の労働局(需給調整事業部門)です。東京都内の事業所であれば「東京労働局 需給調整事業部」が窓口になります。

申請書の記載上の注意点

労働者派遣事業許可有効期間更新申請書(様式第1号)には以下を正確に記入します。

  • 許可番号(現在の許可証に記載)
  • 派遣業の事業内容(業種コード)
  • 事業所の所地・名称
  • 派遣元責任者の氏名・住所
  • 資産状況(貸借対照表の数値をもとに記入)

記入例は厚生労働省が公開している「労働者派遣事業 許可等手続マニュアル」で確認できます。


派遣元責任者の要件

派遣元責任者が不在・要件不足の場合、更新は認められません。

選任基準

派遣元責任者として選任できる人物の要件:

  • 成年に達した後、3年以上の雇用管理経験があること
  • 派遣元責任者講習を受講・修了していること(直近3年以内)
  • 禁固以上の刑に処せられていないこと、労働関係法令違反がないこと
  • 適切な雇用管理を行う上で支障がない者であること

事業所ごとに1名以上の派遣元責任者を選任する必要があります。また、派遣元責任者が管理できる派遣労働者は1人あたり100人までとされています。100人を超える場合は、追加で責任者を選任してください。

派遣元責任者講習の受講・更新

派遣元責任者講習の修了証の有効期間は3年間です。更新申請時に有効期間内のものが必要なため、期限切れに注意してください。

講習は全国の指定機関が実施しており、オンラインで受講できるものもあります。有効期限が切れる前に早めに受講を予約してください。

責任者計画書の作成

許可更新時には、派遣元責任者の業務遂行計画(責任者計画書)の提出を求められる場合があります。以下の内容を記載します。

  • 派遣労働者の雇用管理の方針
  • キャリア形成支援の計画
  • 個人情報の管理体制

更新前に整備が必要な社内体制

書類審査と並行して、社内の運営体制が許可基準を満たしているかを確認します。不備があると不許可の原因になります。

帳簿・雇用管理台帳

派遣事業者は以下の帳簿を整備・保存する義務があります。

帳簿の種類 保存期間 主な記載事項
派遣元管理台帳 3年 派遣労働者ごとの派遣先・期間・業務内容
就業条件明示書の写し 3年 派遣先・業務内容・就業条件
派遣先管理台帳の写し 3年 実際の就業実績
キャリアアップ措置の記録 3年 教育訓練・キャリアコンサルティングの実施記録

更新前に帳簿の整備状況をチェックリストで確認し、不足があれば補完してください。抜け漏れが多いと労働局からの是正勧告につながります。

苦情処理・相談窓口の整備

派遣元は、派遣労働者からの苦情を適切に処理する体制を整える義務があります。

整備が必要な事項:
- 苦情処理担当者の選任・明示
- 苦情受付から解決までのフロー(手順書)の整備
- 苦情処理の記録の保存(台帳形式)
- 派遣先との連携ルールの文書化

苦情が発生した際に対応できる体制が整っているかを確認し、手順書や担当者の記録を更新申請書類とともに保持してください。

ハラスメント防止措置

2020年6月施行の改正法により、派遣元はハラスメント防止に関する以下の措置を講じる義務があります。

  • パワハラ・セクハラ・マタハラ防止の方針の明確化と周知
  • 相談窓口の設置(社内外いずれか)
  • 相談者・行為者の適切な対応・事後措置
  • 再発防止策の策定

就業規則やハラスメント防止規程が最新の法令に対応しているか確認してください。規程の整備が不十分な場合は、更新前に改定することを強くお勧めします。

安全衛生管理

派遣元は、派遣労働者の安全衛生について責任を負います。特に以下の点が審査時に確認されます。

  • 健康診断の実施記録(雇入時・定期)
  • ストレスチェックの実施(常時50人以上の場合)
  • 安全衛生教育の実施記録
  • 労働災害発生時の対応手順

情報提供・情報公開義務

2015年の派遣法改正以降、派遣元は以下の情報を派遣労働者に提供する義務があります。

  • 派遣料金の明示(マージン率・派遣料金の平均額)
  • 教育訓練の内容
  • 待遇に関する情報の開示(比較対象労働者との均等・均衡待遇)

マージン率等の情報は、インターネット等を活用して公開する義務があります(事業所内への掲示も可)。未対応の場合は速やかに対応してください。


法改正への対応

派遣法は頻繁に改正されます。最新の法令要件を把握した上で更新申請に臨んでください。

直近の主要改正ポイント

2020年施行:同一労働同一賃金(派遣労働者への適用)
- 派遣先均等・均衡方式または労使協定方式のいずれかを選択・実施していること
- 労使協定を締結している場合は、協定書を備え置いていること

2020年施行:ハラスメント防止措置の義務化
- パワーハラスメント防止規程の整備が全企業に義務付け

2021年施行:雇用安定措置の強化
- 同一の派遣先に3年継続就業する派遣労働者の直接雇用への推薦等の義務化

更新申請の際、これらの改正事項に対応した体制・書類が整っているかを必ず確認してください。対応できていない場合、許可更新が認められないリスクがあります。

是正勧告・法違反があった場合の対応

過去5年以内に労働局から是正勧告・行政指導を受けている場合、更新審査で不利に働く可能性があります。勧告内容に対して適切な是正措置を講じ、その事実を書類として保存しておくことが重要です。

是正指導後の対応が不十分と判断された場合、許可の更新が拒否されることもあるため、勧告受領後は速やかに対応計画を立て、記録を残してください。


よくある質問(FAQ)

更新申請を忘れたまま有効期限が切れてしまった場合は?

許可が失効し、派遣業を継続することはできません。業務を続けていた場合は無許可営業となり、行政処分の対象になります。すぐに管轄の労働局に相談し、新規申請の手続きを確認してください。

子会社・関連会社が許可を持っている場合、親会社も別途更新が必要ですか?

許可は法人ごとに付与されます。親会社・子会社それぞれが独立して許可を取得・更新する必要があります。

合併や組織変更があった場合、許可はそのまま引き継げますか?

許可は原則として引き継げません。合併・会社分割等があった場合は、存続会社または新設会社が改めて新規申請を行う必要があります。組織変更が予定されている場合は、事前に労働局に相談することをお勧めします。

資産要件が不足している場合、更新できる方法はありますか?

決算日までに役員借入金の資本金への振替(DES)や増資を行い、基準資産額を引き上げる方法があります。また、更新申請の時期に合わせて決算期を変更する方法もあります。いずれも専門家への相談が必要です。

更新申請の審査中に有効期限が来てしまった場合はどうなりますか?

期限内に申請が受理されていれば、審査中も従前の許可の効力が継続します(派遣法第10条第4項)。ただし、申請の受理が遅れると適用されない場合もあるため、余裕をもって申請してください。

有料職業紹介事業の許可も持っている場合、更新手続きは別に必要ですか?

はい、労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可はそれぞれ独立して管理されており、更新も別々に行う必要があります。有料職業紹介事業の更新手続きについては、有料職業紹介事業の更新許可も併せてご確認ください。

まとめ

派遣業許可更新の準備は、有効期限の5〜6ヶ月前から始めるのが原則です。特に以下の3点は早期確認が必須です。

  1. 資産要件の充足確認(基準資産額2,000万円以上・現金預金1,500万円以上)
  2. 派遣元責任者講習修了証の有効期限確認
  3. 同一労働同一賃金対応・ハラスメント防止規程の整備状況確認

書類準備が複雑で、初めての更新は特に戸惑うことが多いです。不安な点がある場合は、期限に余裕のあるうちに専門家に相談することをお勧めします。


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当事務所(江口晋平公認会計士事務所)では、派遣業許可更新に必要な財務書類の作成・資産要件の確認・合意された手続(AUP)による証明書発行に対応しています。

  • 資産要件を満たしているか確認したい
  • 決算書の見方がわからない
  • 更新申請書類の数値を確認してほしい

上記のようなご相談をお待ちしています。

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