労働者派遣事業の許可(ライセンス)とは?
労働者派遣事業を始めるには厚生労働大臣の許可が必要です。
この許可は「派遣ライセンス」とも呼ばれ、労働者派遣法に基づく一定の要件を満たした事業者にのみ与えられます。
許可を受けずに派遣業を行うと無許可営業となり、行政処分や刑事罰の対象となります。したがって、派遣業を始める場合は必ず許可取得が出発点となります。
なぜ派遣業に許可が必要なのか?
派遣業は、労働者の雇用と企業の人材ニーズを橋渡しする重要な役割を担います。
国が許可制を採用している背景には次の目的があります。
- 労働者の保護: 適正な雇用管理が行われるようにするため
- 事業の健全性確保: 資産や体制など一定の基準を満たした事業者のみ参入できるようにするため
- 市場の秩序維持: 無秩序な参入を防ぎ、社会的信頼を守るため
つまり派遣ライセンスは「事業の信頼性を証明するもの」でもあるのです。
派遣業許可の有効期間
派遣ライセンスの有効期間は5年間です。
満了後も継続する場合は、更新申請を行わなければなりません。
更新については派遣事業の更新ガイドをご覧ください。
派遣業許可の取得要件
派遣ライセンスを取得するためには、次の4つの要件を満たす必要があります。
- 資産要件: 基準資産額2,000万円以上、現金・預金1,500万円以上、債務超過でないこと → 要件の詳細
- 事務所要件: 独立区画を有し、派遣労働者と面談できるスペースがあること
- 体制要件: 派遣元責任者を常勤で配置し、厚労省指定の講習を修了していること
- 法令遵守要件: 過去に重大な労働法令違反や行政処分歴がないこと
これらを欠いている場合は申請が受理されないか、不許可となります。
派遣業許可取得に必要な書類
代表的な提出書類は以下です。
- 派遣業許可申請書
- 登記事項証明書・定款
- 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 資産証明(残高証明書など)
- 事務所図面・賃貸借契約書
- 派遣元責任者講習修了証
- 役員の履歴書・誓約書
詳細は定款と申請の関係も確認してください。
派遣業許可の申請の流れ
申請は次の手順で進めます。
- 資産・事務所・責任者の準備
- 必要書類を収集・作成
- 労働局で事前相談
- 許可申請書を提出
- 審査(1〜2か月)
- 許可証の交付
提出先は本店所在地を管轄する労働局です。
派遣業許可取得にかかる費用
許可取得には次の費用が必要です。
- 登録免許税:12万円
- 派遣元責任者講習費:約1万円
- 行政書士・社労士など専門家依頼費用(任意):10〜30万円程度
詳細は派遣業許可費用まとめをご覧ください。
更新と新規許可の違い
派遣業の許可は新規許可と更新に分かれます。
- 新規許可:派遣事業を初めて開始する際に取得するもの
- 更新:有効期間5年の満了時に再度申請するもの
更新も新規と同様の基準で審査されます。詳しくは更新要件まとめをご覧ください。
許可取消しのリスク
許可取得後も、条件を欠いたり重大な違反があれば許可取消しとなる場合があります。
- 資産要件を満たさなくなった
- 責任者が不在
- 帳簿不備
- 法令違反
詳しくは取消しに関する解説をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
- Q. 派遣業許可は誰でも取得できますか?
- A. いいえ。資産・事務所・責任者など一定の要件を満たす必要があります。
- Q. 無許可で派遣業を行うとどうなりますか?
- A. 無許可営業は違法であり、行政処分や刑事罰の対象となります。
- Q. 更新時も新規と同じ審査がありますか?
- A. はい。資産要件や体制要件は更新時にも改めて確認されます。
関連ページ
派遣業許可を理解するために以下の関連記事も参考にしてください。
まとめ:派遣業許可は事業の信用を支える第一歩
派遣業を始めるには、資産・事務所・責任者・法令遵守といった要件を満たしたうえで、厚労大臣の許可を取得する必要があります。
許可は単なる法的義務ではなく、事業の信用を確保するための重要な基盤です。
まずは全体像を理解し、詳細は関連ページで深掘りすることで、確実な許可取得に向けた準備を整えていきましょう。